【自信がないあなたへ】
自信がない…私には出来ない。
出来るはずがない。
遠藤は昔、毎日そんな事を思って生きてきた。
人にはよく「遠藤さんは自信がある風に見える」
「私はあなたみたいな人間じゃない」
と言われるが果たしてそうだろうか?
遠藤がこうなる迄には様々な葛藤があるのだ。
今日は昔話をしようと思う。
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幼少期に祖母から受けた罵倒と暴力があって、
常に私の存在は必要無いと植え付けられて生きていた。
中学の頃家にお金がないと言う両親に
お年玉で貯めた1万円をあげた。
その喜ぶ顔が嬉しかった。
20になった頃
両親の借金問題があり、私は決意した。
また喜んでもらいたくてお金を作りに行った。
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私は学も資格もなかった。
唯一武器になるものを探したら【女性】である事だけだった。
その時誰かが言った
「持ってるもの全てを武器にして生きろ」
私は女性である事を武器にした。
駅近くの雑居ビル…
その界隈はいわゆるカタギの人じゃない方々の生息地だった。
1回りも2回りも
年が上の男性を相手にする事があった。
怖かったし、よく分からなかったけどお金は普通よりもたくさん稼げた。
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嫌過ぎて苦し過ぎて
帰りの車では毎日泣いていた。
運転しながら前が見えなくなるほど、叫びながら帰宅する。
家は静まり返っていて
「お帰り」の言葉ももう何年も聞いていない。
ダイニングに置いてある私の椅子には
いつも新聞と要らないチラシが山積みだった。
…もう、帰ってくるところはないんだなと悟って部屋にこもって、声を上げずに泣く。
嗚咽が漏れないように
タオルを口に突っ込んで朝まで泣いて
泣き疲れて寝るんだ。
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半年で400万円を貯める。
両親に100万円の入った封筒を手渡した。
母はすんなり受け取った。
実に呆気なかった…拍子抜けした
私のこれまでの価値はそんなもんかって。
そして
半年を待たずにその金は泡のように消えて居た。
その頃から
両親との仲は更に冷えていった。
言葉を交わす事もなく、
笑う事もなく
挨拶もしなくなった。
父は私が毎晩遊びに行っているものだと思っていた、私は思った。
貴様らが寝てる間に、私がどんな思いで金を作ってるのかわかるか?
喧嘩になれば
私は彼らにツバを吐き、
彼らは私の頬を殴った
でもそんな想い
わかるはずはなかった。
私は伝えていなかった。
苦しい事も、辛い事も、何も言わなかった。
言ったら負けだと思った、
心配もさせてはいけないと心のどっかで思ってもいた。
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エステサロンで売上トップをとっても褒めてもらうことはなかった。
父は親戚の女の子がピアノの先生をしている方が好きみたいだった。
私はどこまで頑張れば
この人達に愛されるんだろう…
何を無くせば、その愛を手にする事ができるか
もう分からなくなっていた。
自分で自分を傷つけ始めた。
大量服薬をした。皮膚を切り裂いて血が出た。
洗剤を飲んだ。車に何度も飛び込もうと思った。
それでも何も気付いてもらえなかった。
エステサロンのお昼ご飯、
先輩はお母さんが作ってくれた弁当を食べていた。その横で後輩は夢を語る。お母さんがエステサロンを出してくれるらしい…
そんな話を見たり聞いたりするのが苦痛だった。
そんな弁当捨ててやりたかった。そんなエステサロン潰れちまえばいいと思った。
何故あなた達は
何もしなくても愛されるの?
私はいろんなものを捨てた。
プライドも青春も、恋も全部
それでも手に入らない愛を
何故あなたはそんな易々と手に入れているの?
悔しくて
ただただ羨ましかった。
嫉妬は憎しみは日を追うごとに増した。
みんなの事は大嫌いだった。
だから売上を上げる意外私には価値はなかったのだ。
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そんな中
統合失調症の兄が焼身自殺を図った。
(正確には未遂)
両親は兄を心配していたが私は少し違った。
私はそんな兄さえ羨ましいと思った。
彼はその日から
目をかけてもらえる。そう思った。
でも、同時にこんな感情も芽生えた。
私は昔から兄がとても好きだった。
祖母からの仕打ちや暴力から
救ってくれたのが2つ上の当時5歳の兄だった。
兄の分しか買ってこないお土産。
私は怖くて「欲しい」の一言すら言えずにいた。
兄はそんな私を見て祖母に言った。
「僕の分はもう要らないから、ゆうこの分を買ってきてあげてよ」
その日以来祖母は
渋々でも私にお土産を買ってくるようになった。
幼い私にとって、兄は世界一かっこいいヒーローだった。
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変わり果てた兄を見て
再び両親を憎んだ。
兄の未来は無くなった。モルヒネを大量投与しなければいけないほどの火傷だった。
彼はこの先恋する事もなければ、
就職さえこの先できるか分からない状態だった。
お前らの子育てのせいで
私達がいつもこんな思いをする。
優しかった兄は変わってしまった。
兄ちゃんの未来を返せよっ!
お前らが壊していいもんじゃねーんだよ!
私の未来はなんとかするからいいけど
せめて兄ちゃんの未来を奪うのはやめてやってくれと言った。
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そして私はことの発端や原因を探ることにした。親戚の家に行って聞込みをした。
するとこんな事がわかった。
父は超お金持ちの地主の末っ子。
しかし父が生まれる前に、いわゆる私の祖父は死んでいた。
父は母親に育てられたので
父親のやり方を知らなかった。
そして母は「13才でこの子は死ぬ」と医者に言われて育てられた箱入り娘だった。
こんな2人の結婚で
私と兄は誕生した訳だ。
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過去を辿った時
世の中はどうしようもない事もあると言う事を知った。
両親にも親がいて、
その環境や考え方で人は形成される訳で…
もし
私が父の母だったら息子を可愛がらないだろうか?
もし
私が娘は13才で死ぬと言われたら箱入りに育てないだろうか?
物事はその立場にならなければ
分からない。という答えが出た。
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私は
こうも考えた
私は本当に愛されてなかっただろうか?
彼らは不器用ながらも彼らなりに
子育てをしたのではないだろうか?
お金がなくて判断を誤った時期があったのではないか?
彼らは私のことが本当に嫌いなのだろうか?
私は思い出した。
幼い頃
どーしても欲しかった
真っ白なクマのぬいぐるみがあった。
駄々をこねまくる私に父は
2万も出してそれを買ってくれた。
私が美容業界の雑誌の一面を飾った時の事
母はその雑誌を、親戚や近所に配りまくった。
付箋が貼られていてボロボロになるまで何度も何度も読んでたことが見受けられた。
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私は愛されていたのかもしれない…と言う事を
初めて思った。
私は23の時に子供をおろしている。
理由は
社長になる為だった。
嫌で嫌でたまらない仕事を何年も何年もして、寝る間も惜しんでやっと表の世界に足を踏み入れられる時期だった。
今産んだら、全ての努力が終わると思った。
お腹の中にいたその子は
たった1週間で命を終え消えた。
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本来なら
母である私の声が聞けた。
父である人の腕に抱かれただろう。
私の両親の顔も、私の顔も知らずに消えた。
空気も吸う事もなく、
その目に光を入れる事もなく消された。
喜びも悲しみも痛みも苦しみも
感じることは許されず、私の手によって
その短すぎる生涯を終えた。
私は両親に何か言える立場なのだろうか?
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彼らは私に時間を使い、お金を使い
自分達の自由より私や兄を選んだ。
私にはそれができなかった。
私は両親に
苦しさも、悲しみも、憎しみも嫉妬もさせてもらえた。好きな人ができたり、笑ったり怒ったり。
全てさせてもらった。
私は自分の愚かさに気付いた。
十分なほど愛されていた事に気づいた。
13年続いた不仲は
私の思い違いということが分かった。
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私はワガママで欲張りだった。
もっともっと愛して欲しかった。
大好きだった。だからこっち見て欲しかった。
ただただ喜んで欲しかった。
彼らが死ぬ前に気付いたことは幸いである。
これが、私のいう【感謝】というもの。
この事に気付いてから
色々なことへの考え方が変わった。
いろんな角度で考えなければいけないとも思えた。まだまだ勉強中だが、私はこの時生まれ変わりをした。
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それまでは
痛みから逃げることばかりしていた。
できない事から逃げ
辛いな事から逃げ
良くないことは人のせいにした。
だから何も上手くいかなかった。
逃げれば逃げるほど
自分の居場所がなくなった。
だから孤独だった。
頼るとか、助けるとか、協力するとか
クソくらえと思ってた。
そんな私でも
1つ考え方を変えたら
生まれ変わった話。
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ずっとずっと自信がなくて
私は幸せにはなれない、なってはいけない
そんな事思ってたけど
少しそれも変わった。
大好きと言ってくれる人ができた。
慕ってくれる人ができた。
助けてくれようとする人ができた。
もしかしたら
最初からいたのかもしれない。
ただ私が愚かで気付かなかっただけ…
だから私は言えることがある。
自信がなくても大丈夫。
今、あなたは愛されてる。
逃げずに向き合う事。
多方面から物事を見る事。
この2つで人生は変わる。
と、遠藤は思う。
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